拡張現実

日々起こったことや感じたことを、やや拡張してかきます。

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1111

今日はポッキーの日。
恋人同士がチョコレートを交換し合い、くちづけを交わす日だ。

その由来はわからない。ポッキーって何だろう。何故11月11日なのか。わからないけれどともかく、私が生まれるずっと前、お父さんが生まれるよりずっと前、大昔、かつて「地球」と呼ばれた星の上で、私たちの祖先が肺呼吸をしていた頃から大切に伝わっている伝承だ。

私たちが生きるこの時代において、その名前しか残ることはなかった「ポッキー」。
それが人名なのか地名なのか、それとも別の何かなのか、私には知る由も無いけれど…
でも、私はポッキーに感謝している。
ありがとうポッキー。
だって、記念日って、それだけで心がウキウキするものね。


ああ、窓の外で祭囃子が聞こえる。
遠く、鬨の声が響く。
ってもうこんな時間!ポッキーゲームが始まっちゃうじゃない。
国をあげてのポッキーゲーム。黒いチョコレートを左手に持つ女は、街の何処かに隠れた愛する人を探す。見つかった男は右手に持つ白いチョコレートをそっと差し出して、そして、二人の愛の甘さを確かめ合うのだ。


ああ、何だか楽しくなって来た!
よーし、どんなにうまく隠れても、絶対に見つけてあげるから、覚悟しなさいよね。
私はドアを開け、垂れ幕と紙吹雪で赤一色に染まった路地裏を、息を弾ませて駆け出した。
11月11日は、ポッキーの日。
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スキットル

戦争モノの映画なんかでたまに目にする、兵士が酒、とりわけウイスキーを携帯するために持っている平べったくて湾曲したあの容器のことを「スキットル」と呼ぶことを今日知ったのですが、最近、そのスキットルに興味津々です。なんかかっこいいじゃない。


2011110701.jpg




ウイスキーはそんなに飲まないので、それほど需要はないんですけどね。酒は大好きなんですが。
しかしこう、例えば辛いことがあったとき、誰もいない公園に一人佇んで、やおらジーンズの尻ポケットからスキットルを取り出しキツいウイスキーをあおる様は、とてもハードボイルドで良いと思うんですよ。どんなものにもまず形から入ろうとする性分です。










そんな俺が成人を迎えたあの夜、親父は俺に銀製のスキットル(その当時はスキットルなんて呼び方は知らなかったけれど)を放おってよこした。
それに反射した満月の光が眩しかったのと、らしくない親父の表情に、俺は顔をしかめた。

「誕生日プレゼントだ。柄じゃねェがな」
「…いい代物じゃないか。マーケットで捌けばいい金になりそうだ」
「バカ、いきなり売り飛ばす奴があるか」
「俺は冗談を言ったのさ」
「だったらその銀より硬ェ表情を何とかしやがれ」

ハ、と短く笑ってバーボンを喉に流し込んだ親父は、俺の血縁では無い。
遠い遠い昔、二度の紛争の憂き目を見て戦争孤児となった小さな俺を拾ってくれたのが彼だった。
当時から既にその名を(悪名ではあるが)世界中に轟かせていたフリーランスの傭兵であるこの人に、血と硝煙の匂いで満ちたこの世で生き残るための力を―――つまりは人を殺すための技術を、俺は片っ端から叩きこまれたのだ。
紛争とあればその規模の大小を問わず、目覚ましがわりに放り込まれる。鼻先を銃弾が掠め、五〇メートル先を這っていた戦友が地雷の爆風に飲まれる。
愛銃のマズルから矢継ぎ早に放たれる鉛が敵兵の身体を赤く染めていくのを見ながら、ああ、俺は今日も生き延びたと安堵する、そんな日常だった。

「まあいいや、さっさとキャップを開けやがれ」
「あ?」
「二十歳だろ。二十歳の夜は親父と酒を酌み交わすもんだ」
「どこの常識だ」
「世界中余す事無くだよこのバカ息子」
「ったく…わかったよ」

恨んでなんかいない。寧ろ感謝している。元々傭兵になる前から、死は俺のすぐ側にいたのだから。
要するに親父は、そいつとのうまい付き合い方を教えてくれたのだ。
キャップを外すと、容器の口から揮発したアルコールの強い香りが立ち上った。

「乾杯」
「乾杯」

ガチン、と少し乱暴に容器をぶつけて、俺はぐいとスキットルを傾けた。飲み方なんて知らなかったから、一気にあおった。口が鼻孔が喉が腹が、煮え湯でも通過したかのように熱くなり、たまらず咳き込んだ。

「あーあーあー勿体ねぇなあ。そいつはとっておきのスコッチなんだぜ?」
「ゲホッ、ゲホ……し、知らねえよ…馬鹿」
「ハハハハハッ!傭兵としてはずいぶん成長したかと思ってたけどよ、こっちの方はからっきしダメだなあ!
 まぁいいさ。また暇ができたときにでも、俺流の酒の飲み方ってやつを教え込んでやるからよ!」

また飲もうな、そういって親父はやけに嬉しそうに、持っていた酒をグビグビと飲み干した。
俺は、その親父の言葉が嬉しくて、成長したといってくれたことが嬉しくて、誕生日プレゼントをもらったことが嬉しくて、嬉しくて嬉しくてたまらなかったけれど、
未だ口の中に残る酒の香りの強烈さと恥ずかしさが邪魔をして、その日、俺は結局礼を言えなかった。





次の日、親父は戦場で心臓を撃たれて死んだ。たった2発の、銃弾だった。

















それから数年経った。俺は傭兵を続けていた。どんな苛烈な紛争地帯にも先んじて飛び込み、勝利を納め続けた。
表情ひとつ変えずに、敵を屠り殺す悪魔。キリングマシーン。戦場で「死」とは、つまり俺のことだった。
その左胸のポケットには常に銀色のスキットルが刺さっていて、勝利の夜、満月を望んで一口、スコッチを喉に流し込んだ。
いつしか、そいつが俺の二つ名になっていた。「シルバー・スキットル」…その名を聞いた味方は、強い力と共にある自らに高揚し、敵は忍び寄る死神の足音に怯えた。
かの伝説の傭兵である親父を超えた戦士と評され、恐れと共に讃えられた。違う、俺は親父を超えてなんかいない。
何故ならば俺は親父に、まだ酒の飲み方を教わっていないのだ。あの日のままに、俺は酒を旨いと感じたことがない。
ただ、戦場の匂い…血の、肉の、死の、匂いを、鼻にこびりついたこの匂いを、酒で洗い流しているに過ぎないのだ。
未だ飲み方なんて知らなかったから、一気にあおった。口が鼻孔が喉が腹が、煮え湯でも通過したかのように熱くなり、たまらず咳き込んだ。
その酒の強さはあの日と変わらないのに、俺は親父のように、笑って酒を飲めない。
俺は親父を超えてなんて、いない。










とある戦場で、俺は一人窮地に立たされていた。銃弾の雨、いや、もはや銃弾の洪水と呼べるそれが、身を伏せたトーチカの頭上を通過していく。
味方は全滅だ。敗戦は明らかだった。ここで死ぬと思った。怖い、怖いと、心から思った。
傭兵になって初めて、死を恐れた。
死は俺のすぐ側にいた。そんなことはもうずっと知っていたのに、死を認めてしまえば、俺は親父の死と、向かい合わなければならなくなる。
思えば親父が死んだ日以降、俺は死から逃げ続けていたのかもしれない。俺はもうずっと、それを酒で洗い流し、ごまかし続けていたのだ。
そいつとのうまい付き合い方を教えてくれたのは、他ならぬ親父なのに。ああ。親父の顔に、泥を塗ってしまったな。





「クソ、やっぱり、親父には、勝てなかったなぁ…」





急所に向けて正確に発射された銃弾の一撃で、俺の意識は一気に暗転した。










『やれやれ、いつまで経っても、お前は酒を飲むのがヘッタクソだなあ』
『だってこんなもん、美味くもなんとも無いじゃないか』
『当たり前だこのバカ息子。そんなしょぼくれたツラして酒なんか飲んでも、美味いわけねえだろ?
 酒ってのはな、ゲラゲラ笑いながら飲むもんなんだよ』
『…』
『死ぬのが怖いか?』
『…怖いよ』
『俺の死を認めたくない?』
『…うん』
『今のお前はもう死んだ俺の腰にしがみついて愚図ってるただのガキだよ。
 あーあ。俺はさっさと腰を下ろして、ゆっくり酒でも飲みてえんだけどなー』
『…でも俺はもう死んだよ。胸を撃たれて死んだ。親父と同じだ。
 だから親父、一緒に飲もうよ。あの世で俺に、酒の飲み方を教えてくれよ…』
『お前が?俺と?同じ?ハハハ、ヒヨッコが笑わせるぜ』

鼻で笑った親父は血に染まったシャツをはだけて、その戦士の胸を俺に見せつけた。
鮮烈な赤。銃創が3つ。これが死だった。

『どうだ、立派な死に様だろ?これが俺だよ。俺の生きた結果だ』
『…だから親父、俺も撃たれて死んだんだ。俺の胸にも、穴が…』

言いながら自分の胸をまさぐって、気づく。
俺の胸には、穴なんて開いていなかった。

『…なんで…』
『だから言ったろ。今回のお前は死に嫌われたのさ』

にわかに世界が、白く染められていく。
その白に、目の前の赤がゆっくりと、溶けこんで…

『待ってくれ、親父!俺は、俺はまだあんたに、あの時…』
『そいつはまた今度、サシで飲んだ時に聞いてやるよ。
 向い合って座ってさ。あの日みたいによ』
『………分かったよクソ親父。腰据えて待っ




























某月某日某所、小さな墓地に、一人の男が花束を携えて訪れる。
体躯は山が如く大きく、正しく歴戦の勇士といった風情だったが、その瞳に湛えた光は、暖かく、柔らかだった。
手入れの行き届いた小道を暫く行くと、飾り気も何もない、無骨で、しかし大きな墓石がひとつ。

「よう、約束通り、ちゃんときたぜ」

男は花を供え、軽く手を合わせた後、墓の前にどっかと胡坐をかき、胸元から鈍く光るスキットルを取り出す。何か強い衝撃を受けたのか、その表面は大きく歪んでいた。
キャップを外すと、容器の口から揮発したアルコールの強い香りが立ち上った。

「そんじゃま、乾杯」

手に持つスキットルを顔の高さで軽く掲げて、そのまま一気にあおった。口が鼻孔が喉が腹が、煮え湯でも通過したかのように熱くなる。堪らない。堪らなく、

「くあーーーー、美味いッ!」

男は酒臭い息を吐きながら楽しそうに笑い、その酒を墓石に浴びせた。あたりが酒の匂いで満ちていく。

「どうだ、いい酒だろ。本当はあの時のスコッチを用意できればよかったんだけど、
 あんた、銘柄も教えてくれなかったし、
 むせて吐き出しちまったから、味も覚えてねえしな。勿体無いことをしたもんだ」

遠くでヒバリのさえずりが聞こえる。さわさわと木々が揺れる。雲ひとつ無い、いい天気だ。
日差しが皮膚をじりじりと焼くのも気にせず、男は暫く、墓の主と語り続けた。





少しだけ、酒の飲み方ってやつを知った。
だけど親父ははケチだから、いきなり全部は教えてくれない。
きっとこれからずっと、通い続けなければ、あの日の親父の酒の味には、到底届かないのだろう。
まあいいさ。ゆっくりやるよ。だって俺は生きているんだ。酒が美味いということを知ったんだ。
ま、とりあえず酔っ払っちまう前に、今日の目的は果たさないとな。

「誕生日プレゼント、ありがとうな。嬉しかったぜ、親父」

言って、残っている酒を一気に飲み干す。

「あーーーーーーーーーー、生き返る!」




男は立ち上がり、墓石を軽く撫ぜた後、ジーンズの尻ポケットにその銀のスキットルを差し込んで、その場を去った。

その足取りは軽い。


























ってなーれ。



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| 拡張現実 | 22:54 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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トリックオアトリート

「お菓子をくれなきゃいたずらするぞー!」
「え?え?」
「今日はハロウィンだもの!いたずらするぞー!」
「ちょ、ちょっと待って、たしかかばんの中にのど飴が…」
「さーん、にーい、いーち」


ちゅっ


「へへへ、悪戯しちゃった。
 お菓子を出すのが遅いイノエが悪いんだもんねー」
「全く萌美には叶わないな。
 …だったら俺も、悪戯しちゃおうかな」

二人を包む甘い甘い空気。
これじゃあトリックアンドトリートだよ。

| 短文 | 22:39 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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嘘つき

ふとしたことでケンカをしてしまったイノエと萌美。
口論は一日中続き、気がつけば真夜中になっていた。
しかし原因なんてとっくに忘れたしどうでもいい。
僕は彼女と仲直りするきっかけを探していたのだ。


「…なんなのよ馬鹿!そういうところがむかつくっていってんの!!」
「いいから落ち着けって!」
「知らないよ。帰る。もう帰る。今何時よ」
「ちょっとまてって」
「何時!?」
「…23:00だよ」
「ほんっと今日は最悪。最悪の一日だった。
 無駄な時間ってこのことね?
 全く、あんたといる時間が苦痛でしょうがなかったわよ!
 嫌い嫌い!ほんっとにだいっきらい!!!!」
「ふーん」
「…な、なによ」
「今日は4月1日だね。エイプリルフールだ。
 要するにきみのいってる言葉はウソ。正反対。
 今日は最高で、充実した時間を俺と過ごせてうれしかったんだな?」
「んなっ…」
「すきすき、だーいすき、かぁ…」
「なにいってんのよ!!違うわよ!」
「つまりそのとおりだと…」
「ちがうちがうちがうー!もう…イノエなんか大キラ」
「んー?」
「あ、いや、えと…


 …好き!すきすき!大好きなんだから!」
「ほほう」
「好きったら好き!イノエのこと、大好き!!!」
「まあ、俺もお前のこと大好きだけどね」
「………ぁ…」


聡明な彼女は、すぐにその意味を察する。
表情を曇らせ、視線を外しながら言葉を続けた


「…そうよ、わたしだってあんたのこと、…大好きなんだから」

「…そういやさ、エイプリルフールだな」
「さっき聞いたよ」
「うん。ところで今何時?」
「は?」


そう、4月1日はエイプリルフール。僕は小さなウソをついた。


「0時、10分?4月…2日?あれ?なんで、まださっきから30分も経ってな…」

>「知らないよ。帰る。もう帰る。今何時よ」
>「ちょっとまてって」
>「何時!?」
>「…23:00だよ」

>「…23:00だよ」
>「…23:00だよ」
>「…23:00だよ」


「…あ!」
「ひっかかったw」
「んな、なにふざけてんの…」
「ごめんな」
「え…」
「なんか意地になってたよ。ゴメン。
 もう、ケンカやめよう?」
「………うん」


4月2日。静寂の世界の中で、
僕はひとかけらの嘘もない言葉を、もう一度口にする。


「大好きだよ」
「私も」


---------
モワモワモワーン


来年のエイプリルフールこそこの手でいこうとおもいます。
昔の日記を漁ってたらこんなんでてきて、俺もなかなかやるじゃんと思った。

| 妄想 | 22:58 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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弁当

料理が出来る男はモテるぞと、
ヱヴァンゲリヲン劇場版:破の加持リョウジさんが
シンジ君にアドバイスをしていたので、
ほほうなるほどそれならばと俺も料理を作ることにしてから既に一ヶ月くらい経過。
物事に飽きるのが比較的早い俺ですが、どうにかこうにかやっていけています。
まあ、レパートリーの殆どが「焼く」だけなんですけどね。
そして焦がしてばっかり。


最近は昼の弁当も手作り。まあ、もともと不器用な不器用な俺の弁当なので、
彩りなんてあったもんじゃないし、とても人様に見せられるようなものではない。
そんなわけで、ここしばらくはわざわざ昼休みに外の公園とか、
ベンチのあるところまで弁当をもっていって食べていました。


しかし本日。遂に、と頭につけましょうか。
たまたまコンビニに買出しに出ていた同僚に現場を押さえられてしまって、
もうしどろもどろ。ひーはずかしい。


我ながら恥ずかしがり屋というかなんというか、
そこまで人の目を気にすることもないだろうとも思うんですけどね。


スケッチブックに描いた絵なんかもそうですが、自分の創作物を覗き込まれると、
なんだか自分の内面をまざまざと見せ付けているようで、
不安になってしまうんですよ。同じカテゴリにいる人に
見られるのはそんなに抵抗ないんだけどなあ。




「まあ、気持ちはわからなくはないですけどね。
 それにしたって、気にしすぎですよ」

小さな子をたしなめるようなニュアンスを含みながら、
それでいてどこか楽しげな彼女の言葉に、
僕は肩をすくめるジェスチャーだけで「そんなこといわれても」と返す。

「そもそもイノエさん、別に人が怖いってわけでもないんでしょう?
 仕事の上では物怖じなんてしないし」
「まあ、仕事は仕事ですしねー。給料貰ってる以上コミュニケーション
 取れませんなんて、とても言えませんし。
 でもほら、弁当って相当にプライベートなシロモノじゃないですか」
「そうですねえ」
「そういうものを職場で発見されるのが、なんかくすぐったいというか…」

眉間にしわを寄せながら、自分の口に人差し指を押しあててうなる彼女。
形のいい彼女の唇の輪郭が少し歪む。なんだかドキドキした。目が離せない。
だから、その直後彼女が意地悪そうにその形のいい口の両端をつり上げて、
にぃ、と笑いかけてきたとき、僕は本当にびっくりした。

「へへへ、でももう遅いですよ。私、イノエさんのお弁当の中身、
 ばっちりみちゃいましたもん!
 へー。イノエさんのプライベートって、あんな感じなんだー!」
「え、ぅええ?」
「なんかー、無骨というか、適当な感じ!
 イノエさん、整理整頓ニガテなタイプでしょ?
 掃除とか、ちゃんとしないとダメですよ!」

畳み掛けるような彼女の言葉。頭の中がぐるぐるして、どうしていいかわからない。
くそ、あんなうれしそうに笑ってくれちゃってさ。しかも意外とおせっかい焼きだし。
しかし何だろう、凄く恥ずかしい。恥ずかしいんだけれど、
自分でも意外なことに、このシチュエーションが僕は、全然嫌ではなかった。

ひとしきり笑われたあと、不意に言葉が途切れる。
でも、遠くを走る車のエンジン音も周りの喧騒も、僕の耳には入らない。
不意に頬を凪いだ10月の風はもう随分冷たい筈なのに、
僕の目を静かに覗き込む彼女のその顔は、熱で赤く火照っていた。




「じゃあ会社で、イノエさんのプライベートを知ったの、私が、初めてなんですね
 …えへへ、一番乗りだ」

「…!」



彼女の言葉の破壊力に、僕の最後の砦はもろくも崩れ去った。
ちっぽけな勇気をガソリンに変える。










「あ、あの!
 …あした、また、ここで、昼飯食べませんか…い、一緒に」









「…ハイ。明日は私もお弁当作ってくるから、
 私のプライベートも、知って…」












そして、その数日後、僕と彼女は弁当のおかずを初めて交換した。







僕と彼女は明日を待ち焦がれる。互いに恋焦がれている。
彼女は意外とおせっかい焼きで、やきもちを焼くこともあるかもしれない。

料理を始めて1ヶ月。不器用な僕のレパートリーに「焼く」以外が登場するのは、
まだ先のことになりそうだ。





ってなーれ。

| 拡張現実 | 23:14 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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